五島列島福江島の博物誌～GOTO the Media
ＮＨＫ「にっぽん縦断こころ旅」

福江島が登場した、今年2011年の２つのテレビ番組について書きます。
まず、ＮＨＫのＢＳプレミアム（ＢＳハイビジョン放送）で2月に放送されたのが
「にっぽん縦断こころ旅島」という30分ほどの番組です。
私はＢＳを視聴できないので、最近ようやく手に入れた録画を見ました。
視聴者から送られてきた手紙をもとに、人々の心に残る各地の風景を、
俳優の火野正平氏が自転車で巡るという内容です。
福江島が出てくるのは、この番組の「長崎編②福江島」という回でした。
番組の感想の前に…実は、この時の撮影を担当したカメラマンというのが
たまたま私の知人でした。1月半ば頃に電話がかかってきて、「今度、撮影で
福江島に行くことになった」ということで、少し情報を提供したのです。
私は福江のいろいろな撮影ポイントも知っていますから、その後も情報提供
する心づもりはあったのですが、次の連絡は「今、下見で福江に来ています」と
いう電話でした。行く前にいろいろ注意すべき点もあったのに…五島を
なめてはいけない（笑）。
その後、彼らは２月の初め頃に撮影に行きました。2月は風の強い日も多いし、
あまり旅番組に向いているシーズンとは思えません。そのことも伝えたのですが、
とりあえず場所とロケ日程・放送日だけが先に決まって、現地のコンディションとか
そういうものは二の次のような感じだったのでしょう。

ここで出している静止画は、全てテレビ画面を撮ったものです。
本当は著作権がどうのこうのとあるのですが、この程度なら許してもらえるでしょう。

さて、例のごとく能書きが長くなりましたが、番組を見ました。
井上陽水のテーマ音楽（今は違うらしい）が始まって、俳優の火野正平氏が長崎港で
福江出身者の手紙を読み、福江にジェットフォイルで向かいます。
ナレーションは一切ありません。時々、説明のテロップ（字幕）が入るぐらいです。
火野氏が目指すのは大瀬崎灯台。手紙の主の心に残る風景だそうです。
火野氏は福江港から市外近くを抜けて香珠子（こうじゅし）海岸に至り、富江で食事をします。
そして福江南部の海岸道路を西にたどって大瀬崎へ。自転車で本当に大丈夫かと
思ったら案の定、火野氏は坂道に疲れ果ててしまい、なんと道沿いの家のおじさん
（よりによって足の具合が悪いおじさん）に頼みこんで、軽トラで坂の上まで送って
もらうのでした。あらららら…。
あの坂でアウトだったわけですから、大瀬崎入り口からの坂なんてとてもじゃないですが
60過ぎの火野氏には登れなかったはずです。やはり番組でも歩いてました。
ＮＨＫはどうして海岸まわりのコースを選んだのでしょう。海沿いが島らしいと思ったのかも
しれませんが、二本楠を経由して玉之浦湾沿いを走るという、よりゆるやかなコースも
あったと思うのですが…これはいつかカメラマン氏に聞いてみましょう。

さて、それでも火野氏はなんとか大瀬崎に到着。夕陽を見る予定が、
もう時間ギリギリです。そして、知っている人は知っているであろう、駐車場から灯台へ
至る林道へ。もちろん徒歩ですが、眼下に灯台が見えた時、灯台下の上り階段を
目にした火野氏は「ねえ、あれ上がるの…？」と、ぼそっとロケチームに尋ねました。
ひゃあ、やっと下りだと思ったのに…という心境だったのでしょうか。
夕方の灯台直下に火野氏はたたずむも、結局夕陽は見えず…番組は終わりです。

今回のこの番組は全編にわたって天気が悪いこともあり、
風景美はほとんど表現されていませんでした。ロケチームはちょっと運が悪かったですね。
火野氏も夕方の大瀬崎にしか行けずにちょっとかわいそうでした。
ざんざんきつい思いをして灯台に行ったあげく、本当の良さは感じられずにロケを
終えたと思います。
灯台からの帰り道も彼にはきっときつかったはずです。お疲れ様でした。

ところで、私は火野正平氏のことをあまり知りませんでした。知人に聞くと知っていて、
昔は相当なプレイボーイというか、モテ男として名をはせた人だと言います。
番組に出ていた時は61歳ですが、この歳でピアスをしているのですから、自分でも
そういうイメージを大事にしているのでしょう。
しかし、あまり旅番組には向かない人なのではないかというのが正直な感想です。
ナレーションがない番組だったので、時折入る説明テロップ以外は彼のしゃべりな
わけです（時々、島民との会話など）。面白い話をするわけでもないし、やってきた
土地で感じたことを巧みに言葉にするわけでもない。素朴で飾らない感じは好感が
もてますが、この回を見る限りではなぜ彼が旅人に選ばれたのかよくわかりませんでした。
まあ、毎回見ていれば、味のある俳優さんだと感じるようになるのかもしれませんが。
同じく五島の中通島編も録画をもらったので、そのうち見てみましょう。面白かったりして。

なお、ＮＨＫ「にっぽん縦断こころ旅」は今春4月から始まった新番組です。
番組のＨＰを見ると、2月に放送された長崎編は”パイロット版”、すなわち試作品的な
扱いのようで、現在放送している番組はちょっと改良されているようです。
ＨＰを見ても、今回の「長崎編」のことは全く記述がありません。
幻の番組というわけでしょうかね。
テレビ番組や新聞の批評にはちょっとねちっこさを見せてしまう私ですが、お許しを。
(2011.6.9記）