最後に鳩山氏が無理矢理カタをつけて？いったのが米軍普天間飛行場の移
設問題でした。アメリカのいいなりであった代々の自民党政権から交代したこ
とで国外移設、つまり日本から米軍を撤退させていく方向へ舵を切れば痛快
だと思っていたのですが、全然ダメでしたね。しかも結局、辺野古案に戻ると
いう世にも最悪な選択をしてしまいました。
第二次大戦では米軍上陸でひどい目にあい、戦後は米軍基地を押しつけられ
てきた沖縄。その年月は、一人の赤ん坊が年寄りになってしまうほどのもので
す。”新基地”が作られてしまったら、また何十年も？さらに先まで？ひどい騒
音や墜落事故、一部米兵による犯罪等に苦しむことになるということです。
ここしばらくの普天間問題のさなか、私もふと考えることがありました。移設先
として、まさか五島にもってくるなんていうこともあり得るのか？と。
(10.3.27：福江港沖より）
最近、人づてに次のような話を聞きました。上五島出身でGWに帰省していた男
性の発言だったそうですが、私の文責で要約します。
曰く、「米軍基地移設先でもめているが、基地は五島にもってくればいいじゃな
いか。反対する人だっていないだろうし」。
また、私自身も五島在住者の口から
「基地が来れば…（島が）潤うでしょうねえ」という言葉を聞きました。
五島列島は過疎の島々です。全体としては経済は厳しく、ハコモノ・巨大プロジ
ェクト的な話には飛びつきたい人々もあるでしょう。
米軍基地が来るとなれば国からアメ、すなわち地域振興策やらでカネがたくさん
落ちるだろう、と期待する向きが出てくることはある程度予想できます。しかし、
基地の存在が落とすカネはあるかもしれませんが、デメリットをしっかり計算する
べきでしょう。普天間の海兵隊にWelcomeというのなら、、それは先にもあげた爆
音や、強盗、ひき逃げやレイプを含む犯罪、いつ起きるともしれない墜落事故（沖
縄では小学校に落ちて多数の死傷者が出た事件もあります）をも受け入れるとい
うことでもあります。犯罪については、一部のたちの悪い兵士とその家族らが行っ
ていることではありますが、沖縄の例を見ても、ゼロになることは絶対にありませ
ん。もしかしたら、あなたの大事な人が暴行を受ける対象になるかもしれない。そ
して、兵は基地にガードされ、逮捕もされず、罪を問われることもなく本国へ帰っ
てしまう可能性もあります。全くのやられ損で、よほどでなければ日本政府も有効
な手を打てないかもしれません。何年か前、沖縄の大学構内に米軍ヘリが落ちた
時だって米軍は現場を勝手に封鎖して、関係者どころか警察さえ入れませんでし
たね。
米軍基地が来てもいいんじゃないかと気軽におっしゃる五島の皆さん、そんなこと
が起こってもよいですか？私はそんな屈辱には耐えられませんけど…。
カネというメリットよりもデメリットのほうがはるかに大きい。沖縄県民の大多数が
県内移設を拒否しているのは、それを経験してきたからです。
(09.9.27：鬼岳より）
「五島の人は基地に反対しないだろう」、という見解もいかがなものでしょうか。上
陸戦はなかったとはいえ、戦時中は五島にも米軍が空襲に来ていますから、そ
の恐怖を知っている人はまだいるはずです。私の母も米軍機から身を隠そうと
竹藪や防空壕に隠れたりしたそうですし、爆撃されて亡くなった人もいるそうです
から。
私は日本から米軍が消えてほしいと思っている一人ですが、こんなことを言って
いるとお決まりのご意見が来るかもしれません。「じゃあ、中国や北朝鮮が攻め
てきたらどうするんだ。米軍は抑止力として必要なんだ。アメリカにそっぽを向か
れたらどうするんだ」と。こうしたよくある論に対しての答えは私も持っていますが、
長くなると思うので、今日は次のようにだけ述べておきましょう。沖縄で同じ事を
言えますか？そんなに必要なら、あなたの住む自治体に基地を誘致すればいい
のでは？と。
米軍は日本を戦略拠点として利用しているだけで、別に守っているのではありま
せん。沖縄に駐屯している若い兵士も、日本の記者の問いかけにこう答えていま
した。
記者「あなたたちは日本を守るためにいるのか？」
兵士「イエスでも、ノーでもない」
正直な答えだと思いますが、いかがでしょうか。
それにつけても、「普天間基地返還」のはずなのに、なんでそれが新しい基地を
作る話になるんでしょうね。実はこれ、返還でも何でもなくて、古い基地を廃止し
て新しい基地を建てる、「建て替え」が本質なのではないでしょうか。
今回の騒動については、大手マスコミの報道にも相当な疑問を感じました。大新
聞や在京キー局の取材者たちの多くは、「米軍が日本に駐留し続けるのは仕方
ない」と思っているのではないでしょうか。大手メディアに関していえば、「駐留米
軍を減らしていこう」という論を張る社がないように見えたのは不思議でした。日
本に米軍が駐留し続けることの是非を世に問う絶好の機会でもあるはずで、そ
れもまたマスコミの役割の一つだと思うのですが、連日「もうすぐ約束の５月末だ、
それまでに決められなかったらどうするんだ、辞めるのか」そればっかり問題視し
てましたね。こんな重大な案件に期限を切った鳩山氏もよくなかったですが、
本当に大事なのは期限ではないでしょう。本当にマスコミの姿勢にはがっかりし
ました。沖縄駐在経験もあり、自分の番組でしばしば沖縄の特集を組んでいた
故・筑紫哲也氏が存命であったら、どのようなことを言っていたでしょうか。
しかし「思いやり予算」とかいう馬鹿げた出費もそうですが、この新基地建設も
自分の払っている税金でなされるのかと思うと、払いたくなくなりますね。米軍に
ノーと言える政治家は日本にはいないのでしょうか。
五島には？
(2010.6.13記)