(2018.11.20：岐宿町）
2018年11月19日、韓国から福江島への飛来が確認されたオスのコウノト
リ、A２９。その後も福江島への滞在が続き、韓国ではアイクと呼ばれてい
るということで、私たちもそう呼んでいました。最近は、滞在５年目に入った
もう一羽（性別不明）が居着いているエリアに移動してきて、２羽が同時に
空を旋回するようすも観察され、春が来るのが待ち遠しかったのですが、
そのアイクが島内で死んだことが2019年２月4日に確認されました。
私は当日、知り合いの長崎県自然環境課職員からの連絡で事を知りまし
た。島内の農地で大きな鳥の死骸が見つかり、住民からの通報で現地に
赴いた五島振興局（長崎県の出先機関）職員が「A29」の足環が付いたコ
ウノトリであるとを確認・回収したということでした。
死骸の写真を見せてもらったところ、大きな外傷らしいものは見られず、
病死か衰弱死であるように見えました。
実はアイクは、飛来後にケガをしてしまっていました。島内知人のY氏が12
月に気づいて撮影し、写真を送ってくれたのですが、左の翼の下側に赤く
なった部分が確認できました。飛ぶことはできていたそうですが、左翼を通
常通りにたたむことができず、翼が少し垂れ下がるような格好であったとの
ことでした。何かに衝突するなどして、外傷とともに関節に異常が起きてい
た可能性があります（※このケガについては、本土のコウノトリ関係者には
12月中に知らせてありました）。
2019年１月13日にY氏が撮影した写真では、翼のケガに回復は見られない
ようすでした。それに加え、頭部中心に羽の汚れが目立ち、ツヤを失って
パサパサした、ずいぶんみすぼらしい姿になっていました。飛来して間もな
い時期とは全く異なります。この時点で、相当に弱ってしまっていたのでは
ないでしょうか。現時点では詳しい死因はわかりませんが、やはり翼のケガ
をきっかけとして、日々の生活の中で生じた支障が積み重なっていった結
果ではなかったのかと思います。Y氏の話では、死骸が見つかる前の２週
間ほどは、探しても見つけることができなかったそうです。
国境の海を越え、五島列島の福江島に降り立ったコウノトリのアイク。
春を前に、飛来後３ヶ月を待たずして命を落としてしまったことは、残念とし
か言いようがありません。アイクのふるさと・韓国の人々にとっても同じでし
ょう。
その後、アイクは五島振興局から兵庫県立コウノトリの郷公園に搬送され
ました。せめて死因がわかると良いのですが。
(2019.2.11)