五島列島 ・福江島の博物誌〜知られざる五島の海〜

五島ダイビング事情 2013

この４年でショップが減少…
2007年〜2009年まで、「五島ダイビング事情」というものを書いてきました。その後も
続けようと思っていたのですが、うっかりしている間に何年も経過してしまいました。
ということで、かなり久々ですが、2013年現在の状況について書きたいと思います。
まず、この4年で五島地域におけるダイビングショップ数が減りました。
2008年には全体で５軒のダイビングショップがあったのですが、2013年11月現在では
３軒になっています。



福江島では３軒あったうち１軒はそのまま存続、1軒が廃業、１軒はオーナーが替わり、
店名も変更して営業を続けています。
上五島では２軒のうち１軒が廃業し、現在は1軒だけ営業しています。
五島を訪れるダイバーの数の動向は私にはわかりませんが、廃業した２軒については、
何らかの理由で淘汰されてしまったということでしょう。
現状、五島でダイビングをするとしたら、下記の３軒が利用できます。

福江を拠点にする場合

福江島には2013年現在で２軒のダイビングショップがあります。このうち、
「五島ダイビング・ラグーン」は、かつての「潜水館」というショップの営業
を引き継いだお店です。「潜水館」には10年近くお世話になったのですが
、「ラグーン」になってからは、私はまだ利用したことがありません。「潜水
館」時代にはショップの建物がなく、集合も港であり、（宿泊地から港まで
の送迎はありました）、ダイビング後にすぐシャワーを浴びたりということ
も難しかったです。機材の洗い場もなかったので、ダイビングの盛んなエ
リアから来たダイバーはとまどうことも多かったでしょう。現在の「ラグーン
」については、直接いろんなことを知っているわけではありませんが、ホー
ムページを見ると、所在地が玉之浦になっています（福江市街・港から遠
い）。そして、ダイビング時の集合場所として福江港の一角を指定している
ので、おそらく、前と同じでダイビングボート下船後のシャワー利用、機材
洗いは、宿に帰ってから行うことになるのかもしれません。前身の「潜水
館」は、水中生物とか撮影のことはほとんど知識がありませんでした。「ラ
グーン」も、ホームページを見る限りではあまり詳しくなさそうです。ただ、
生物を観察したり撮影したりするばかりがダイビングではありません。
「ラグーン」は、一般的なダイビングの他にも、バナナボートなど他のマリ
ンレジャーにも対応しているようなので、「○○という魚が見たい」とか、そ
ういうダイバーでなければ、先代から引き継いだ力で楽しませてくれるの
ではないでしょうか？



2008年から営業を始めた「マリンサポート五島海友」は今も存続していま
す。それまで福江島のダイビングには存在しなかった「ブリーフィング」
（※このポイントはどういう地形で、深さはどれくらいで、どういう魚が見ら
れる、などの事前説明のこと）をしっかり行っていて、ガイドさんはウミウシ
などの小さな生きものを探すのも得意としています。ショップは市街地に
比較的近く、ボートを出す港も車で数分の距離です。私は現在、ここを利
用しているのですが、ハイシーズンの夏場や春・秋の連休絡みは、早め
に予約しないと潜れないことがあります。また、最近は五島でもマグロ養
殖が盛んになり、その養殖場での潜水作業を依頼されることが多くなっ
ているそうで、夏以外の時期は、ダイビングできる日がかなり限られる感
じがします。早めに問い合わせすることをお勧めします。夏以外の時期
は、例えば、「平日で３日連続ダイビング」などというのは、福江ではけっ
こう難しいかもしれません（ダイバーがある程度まとまった人数で、早め
の相談であれば別です）。それから、以前にも書いたことですが、福江で
はビーチから潜ることができません。全てボートダイビングになります。
もうひとつ、ダイビングが目的であれば、宿泊は福江市街をお勧めしま
す。というのは、福江島はかなり大きい島ですから（来島して、広さに驚
く人が結構います）、三井楽とか大瀬崎とか、遠方のエリアに泊まると移
動が大変です。今でこそ「五島市」と言っていますが、平成の大合併前
は福江島内でも５つの市町村があったのですから。

上五島（中通島）を拠点にする場合

上五島には現在、「五島ダイビングセンター・ナイスばでぃー」１軒のみ
が営業しています。私も時々お世話になっているのですが、上五島に
行くには、まずは交通手段の見極めが必要となります。現在、上五島
には飛行機が飛んでいないので、必ず船を利用することになるのです
が、初めて行こうとする人は、中通島（なかどおりじま）に多くの港があ
ることに戸惑うかもしれません。
まあ、長崎経由で来られる人なら奈良尾港、佐世保経由なら有川港、
博多からなら青方港…という具合ですが、ここから、ショップのある道
土井（みちどい）地区までは、公共交通機関が非常に不便です。です
ので、到着地からの送迎は全てショップがやってくれます。予約時に
ご相談下さい。
「ナイスばでぃー」は漁港に面しており、ボート乗り場までは１０数秒で
す。これはとても楽で、好きな人は合間に釣りをすることもできます。た
だ、市街から離れたエリアですので、買い物ができる店はありません。
また、ダイビングが目的であれば、宿はショップに相談するのがベスト
です。道土井地区から遠すぎる宿ですと移動が面倒ですし、「ナイスば
でぃー」で紹介している宿のほとんどは、ショップオーナー夫妻が自ら宿
泊し、吟味されたものです。道土井から比較的近く、食事の美味しい宿
なども紹介・予約してもらえますので、ご相談下さい。



「ナイスばでぃー」ではこの数年でスタッフが増え、ハイシーズン以外のダ
イビング・平日のダイビングにも対応ができつつあります。また、福江では
現在不可能なビーチからのダイビング・漁港でのダイビングもできますの
で、福江では観察が難しい内湾性の生きものも見ることができます。
…と、上五島のダイビングもお勧めなのですが、上五島でひとつ留意した
ほうがよいことがあります。それは、ショップへの連絡は、電話をお勧め
するということ。
ショップのある道土井地区は、インターネット環境が良くありません。五島
では、いまだにＩＳＤＮしかないエリアがあって、道土井もそうではないかと
思います。ですので、メールで問い合わせをしても、数日間返答がないと
いうことがあるのです。過去、私はこれで何度か困ったことがあります。せ
こい話ですが、10日前とか、３週間前までに購入すると安くなる航空券っ
てありますよね。これを押さえるには、１日、2日という時間が大きいので
す。希望日にダイビングができるのか、どうか。それがわかるまでに時間
を要せば、航空券に数千円の差が出るわけです。ですので、私としまして
は、上五島でのダイビングの予約・相談は電話連絡をお勧めいたします。

上五島は宣伝拡大

五島のダイビング事情も少しずつ変わってきていますが、世界レベルでも
、日本レベルでもそれは同じことです。前にもどこかで書いたかもしれませ
んが、私はダイバーの高年齢化を感じます。私がダイビングを始めた１９
９０年代、どこかにダイビングへ行けば、20代のダイバーが大勢いました。
それこそ「夏はダイビング・冬はスキー」というような若者がたくさんいたの
です。しかし、今は違います。ダイビングへ行けば、40代、50代の中高年が
多くを占めるようになりました。20代のダイバーなんて、本当に少なくなりま
した。これは、若者の失業率が上がり、不安定な非正規雇用が増大してい
ることが大きく関わっているのではないでしょうか。若い世代の、経済的な
余裕が失われているのでは。

こうした中、ダイビング業界も営業努力が求められています。少しでも多く
お客さんを増やす、呼ぶ努力です。では、五島ではどうかというと…上五島
では、ここ何年か、毎年のようにダイビング雑誌「ダイバー」の取材を呼ん
で広告を打っています。以前も書きましたが、ダイビング雑誌の取材は基
本的に「広告」であって、取材されたい側が広告掲載料金を払い、宿代も
ダイビング代も負担して、宣伝してもらうものです。メリット・デメリットはあ
るでしょうが、上五島は自治体（新上五島町）も加わって宣伝を続けてい
ます。上五島で聞いたところによれば、雑誌を見て来島したというダイバ
ーも少なくないようで、それなりの宣伝効果はあるようです。ただ、上五島
では最近営業を辞めてしまったショップもあるわけなので、よくわからない
というところもありますし、広告を打つと悪い意味でも「いろいろなダイバー
」が訪れ、たまに対応に困ることもあるようです。



では、わが福江島ではどうでしょうか。
五島市では、新上五島町とは異なり、ダイビングを盛んにしようという行
政的な後押しはありません。たまには宣伝してもいいと思ったりもするの
ですけどね。訪れるダイバーが増えれば、島で、ダイビングガイドとして
収入を得ることができる人も増える可能性があるのですが。
現状では、島内のダイビングショップによる情報発信がほぼ全て、という
ことになるでしょう。ただ、ブログとかホームページの更新作業というのは
それなりに大変なので、繁忙期などは特に、情報も途切れがちになってし
まうのではないかという気がします。

これが、2013年の五島列島ダイビング事情。また来年？お伝えしたいと
思います。
(2013.11.30）