(06.5月：中通島・道土井湾・水深５ｍ）
魚界の頭脳派か
クロダイ 黒鯛 （タイ科）
Acanthopagrus schlegelii
(06.5月：中通島・道土井湾・水深５ｍ）
★分布：北海道以南〜朝鮮半島、中国など ★大きさ ：６０センチ
五島にはクロダイ釣りの名所がたくさんあります。河口近くの少し濁った
ところや穏やかな漁港・内湾を好みます。島外の釣り人には人気なのか
も知れませんが、基本的に地元の人はこの魚を食べないので、わざわざ
釣っている人もいないように思います。漁港の岸壁などを上から見ている
と、大型のものをよく見ます。
さて、写真のクロダイですが…初めて出会ったのは2005年の７月末。中
通島の道土井湾に潜ったところ、すぐそばにやってきたクロダイがいて、
バシッと写真も撮りました。その時は「なんか逃げない奴だな」ぐらいにし
か思わなかったのですが…。
およそ一年後に同じ場所に潜ったところ、やはり一匹のクロダイがいて、
ずっと私のあとをついてくるのです。こちらがカメラを構えると、気まずそ
うにしてちょっと離れるそぶりを見せますが、撮影をやめ、遠くに移動して
も、振り返ると必ずいるのです。結局、このクロダイは80分近い潜水時間
の間、ずっと私にまとわりついていました。
かつてダイバーにエサをもらったことがあるのか、ダイバーが砂を巻き上
げた時にエサが飛び出てくるのを待っているのか。いずれにせよ、ダイバ
ーについていけば食べ物にありつける可能性があると確信しているようで
した。
各地のダイビングポイントでは時々、餌付けされた魚たちがいて、ダイバ
ーを見ると寄ってくることがあります。しかし、ここまでしつこい奴は見たこ
とがありません。
そして2006年10月…秋の五島で三たび、そいつに出くわしたのでした。
いつもと同じように、１・５メートルほどの距離をとって私について来ます。
ただ、この時はクロダイ自身が一匹のギンガメアジにまとわりつかれて
いたのに笑ってしまいました。アジの仲間の幼魚や若魚はしばしば流れ
藻や大型の魚などにつくのですが、クロダイもターゲットにされてしまった
ようです。クロダイはかなり嫌がっていて、時々スピードを上げては相手
を振り切ろうとするのですが、結局うまくいきませんでした。
（クロダイの上にいる魚がギンガメアジ）
今後、奴のことを「クロ助」と勝手に呼ぶことにします。いつまでお付き合
いできることやら…。（06.11.9記）