地表に開く奇妙な花
ウンゼンカンアオイ　雲仙寒葵 （ウマノスズクサ科）
Asarum unzen
絶滅危惧�U類（VU)…環境省レッドリスト2012
絶滅危惧�U類（VU)…長�ｱ県レッドリスト2011

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(2013.6.6：福江島）

★分布：九州西部（少なくとも福岡・佐賀・長�ｱ・熊本・鹿児島の各県）　　
★花の時期：福江島では３〜５月　★花の直径：２〜３センチほど

山林の地表に生えるカンアオイの仲間。落ち葉の間から茎が伸び、独特
の形をした葉をつけます。カンアオイ類は地域ごとの固有種が多いので
すが、このウンゼンカンアオイも九州西部エリアを中心とした地域だけで
見られます。福江島では島内各地の山地で確認していますが、知ってい
る人は多くないように思います。

ちなみにカンアオイと言えば、「この紋所が目に入らぬか！」でおなじみの
水戸黄門の紋所、徳川家の家紋はカンアオイの仲間であるフタバアオイ
の葉を３枚組み合わせてデザインしたものです。「三つ葉葵」と呼ばれる
葵の御紋は、カンアオイの葉なのです。残念ながら、フタバアオイは五島
にはありませんが。

葉の模様にはいくつものバリエーションがあります。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(2016.3.29：福江島）

茎は大きく伸び上がることはなく、高さはせいぜい、足のくるぶしぐらいと
いうところでしょう。



一部地域の植物ということで、小型中型の図鑑には載っていません。です
ので、手元にある資料でも花の時期などははっきりしないのですが、少な
くとも、福江島で私が観察した限りでは３〜５月にかけて花が見られます。

下の写真、葉から茎をたどった先に３つの花が開いているのがおわかり
でしょうか。

なんとも珍妙な花です。地表近く、時には落ち葉に隠れるようにして咲いて
います。



開いた直径は２〜３センチほど。壺のような形状で、中央には穴が開いた
ようになっています。中は、ライトで照らさないとよく見えません。どんな虫
がやってくるのか、あるいは自家受粉なのか、その点についてわかる資
料は持ち合わせていません。なお、過去に関東でタマノカンアオイという
種類を見る機会があったのですが、それは小さなハエの仲間が訪れると
いう話を聞きました。受粉に関わりがあるかどうかはわかりませんが、ダ
ンゴムシが入り込んでいるのも見た記憶があります。



３月の初めに見てみると、つぼみができていました。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(2016.3.2：福江島）

正面から見ると、こんな感じ。これが３方向にパカッと開くわけですね。



ところで、果実はどんな感じなのでしょうか。今後機会を見て観察してみた
いと思います。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(2015.4.23)

世の中にはカンアオイの愛好家が存在し、地域固有種も多いため、盗掘
もありえます。ウンゼンカンアオイは九州本土にも広く見られるものなので
、わざわざ五島に採りにくる人は多くなかろうとは思うのですが、島民の中
にも堀り取って持って行ってしまう人がいると聞いています。

2016年4月現在、国のレッドリスト（2012年版）では絶滅危惧�U類（VU)、長
�ｱ県レッドリスト（2011年版）でも絶滅危惧�U類（VU)となっています。減少
の要因は盗掘もあるでしょうが、森林開発も大きい影響を与えているのだ
と思われます。
今のところ、福江島では絶滅しそうというほどではないように感じています。
(2016.4.17）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

※参考資料　 「長崎県レッドデータブック２０１１」　長�ｱ新聞社
　　　　　　　　　「牧野植物大図鑑」　北�驫ﾙ

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