絶滅危惧の珍奇植物
ヤマコンニャク　山蒟蒻 （サトイモ科）
Amorphophalus hirtus var. kiusianus
絶滅危惧�U類（VU)…環境省レッドリスト2015
絶滅危惧�TB類（EN)…長�ｱ県レッドリスト2011

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2016.5.25：岐宿町）

★分布：四国南部（現状不明）、九州南部、南西諸島　　★花の時期：５〜６月　

サトイモ科の多年草で、四国南部から九州南部、南西諸島のほか国外で
は台湾にも分布します。長�ｱ県では五島列島の福江島と久賀島で記録が
あります。長崎本土では見つかっていません。林のへりなど、少し薄暗い
場所を好みます。

５〜６月頃、高さ７０センチから１ｍに達する茎を伸ばし、その先には不思
議な姿の花をつけます。花の部分は、図鑑には２０センチぐらいと書いて
ありましたが、今回福江で測ってみたところ１２〜１６センチほどでした。



ゆらめく炎のような形のものは花びらではなく、「仏炎苞（ぶつえんほう）」
と呼ばれるもので、花を守るために特別に変化した葉です。仏像の背後
にある後光を思わせることから仏炎苞と名付けられ、サトイモ科の植物に
よく見られます。
その中央、筆先のように伸びた部分に小花が集まっています。黒っぽい
部分の下に、ベージュ色の粒のようなものがたくさん見えますね。



手元の資料によると、このひとつひとつが雄花のようです。雌花は、この
雄花の集まりの下の方に、たくさん密集して付いているようですが、仏炎
苞を開けないと見えないかなと思います。



私が福江島でヤマコンニャクの花を見たのは、2016年が初めてとなりま
す。今期の観察から言えば、福江島では５月下旬に開花し、花が見られ
る期間は１週間から１０日ほどではないかと思います。複数の株がほぼ
同時に開花したように見え、仏炎苞がしなびるまでにあまり長くはないよう
に感じました。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2016.5.26：玉之浦町）

人によっては不気味とも感じるであろうその姿から、珍奇植物の類とも思
われるヤマコンニャク。私の知る限り、福江島ではずいぶん長いこと所在
不明になっていたようです。
1981年発行の「五島の生物（長�ｱ県生物学会編）」という本に、福江島に
ヤマコンニャクがあると書かれています。私がそれを知ったのは１０年近く
前かもしれませんが、いったいどこにあるのかなと探していました。しかし、
調べてみるとわかるのですが、ヤマコンニャクという植物は図鑑にもインタ
ーネット上にも情報が少なく、島内でも全く情報が得られませんでした。長
崎市在住で福江島にも時々調査に来られる著名な植物研究者も、福江で
ヤマコンニャクを探してはみるが見つからないとおっしゃっていました。つま
り、少なくとも１９８０年前後から、３０数年に渡って行方がわからない状態
になっていると思われたのです。
その後、１９６９年発行の「五島の自然」という古い本を見て、かつては福
江市街に近い八幡神社の社叢にはあったのだということがわかりました。
が、現在の八幡神社では見つけることができていません。

奄美大島では海岸そばの林に見られるらしく、その情報をもとに島の海岸
林に注意を払ってきたのですが、なかなか発見には至りませんでした。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2016.5.25：岐宿町）

ヤマコンニャクという植物を知っておよそ１０年？の2015年。夏のある日、
たまたま行った場所で、カラフルな果実を付けた植物に出会いました。
海岸からは遠く離れた内陸部です。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2015.7.21：岐宿町）

赤い果実の中に青いものも混じっています。
ヤマコンニャクの果実は、熟すにつれ、赤から青に変わるといいます。



近くには、奇妙な形に広がる葉がいくつも見つかりました。



果実と葉の写真を撮り、帰って調べてみると、まさにヤマコンニャクの特
徴と一致しました。非常に意外な場所でしたが、やっと見つかったのです。
前述の植物学者にも”再発見”を報告しました。



最初の発見のあと、別の２カ所でも見つけることができました。そして翌春、
時々チェックしつつ花の時期を待ったのです。
つぼみを確認できたのが2016年５月半ば。20日頃には開花したようで、
私もやっと花を観察・撮影することができました。
ひとつの株が花をつけるのは数年に一度とも言います。花を付けない株
は葉だけを展開し、花をつけた株は開花のあとで葉を広げます。

2016年６月現在、長�ｱ県では福江島でのみ確認されています。久賀島で
も記録がありますが、現状不明です。国の最新レッドリスト（2015）では絶
滅危惧�U類（VU)、長�ｱ県の最新レッドリスト(2011)では絶滅危惧�TB類
（EN)と、高いレベルの絶滅危惧種となっています。福江島では岐宿町、
玉之浦町、富江町で確認できていますが、美しい果実が生け花素材など
に採られる可能性もあるので、撮影地は伏せておきます。

2016年5月末、福江島での開花のもようは西日本新聞でも紹介されました。
(2016.6.5）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

※参考資料　「五島の生物」　長�ｱ県生物学会編
　　　　　　　　 「五島の自然」　五島理科教育協会
　　　　　　 　　「長�ｱ県植物誌(2015/中西弘樹）」　長崎新聞社
　　　　　　　　 「新牧野日本植物図鑑」 北�驫ﾙ
　　　　　　　　 「長崎県レッドデータブック２０１１」　長�ｱ新聞社
　　　　　　 　　「日本のレッドデータ検索システム（ＨＰ）」
　　　　　　　　
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