(2015.11.12：富江町）
九州西部の海岸に生息
ニシヤモリ 西守宮 （ヤモリ科）
Gekko sp.
準絶滅危惧（NT)…長﨑県レッドリスト2011
(2015.11.12：富江町）
★分布：長﨑県（本土側西部、五島列島、平戸、男女群島）、熊本県と鹿児島県の一部
★大きさ：ニホンヤモリより大きめ（１５センチ以上になる）
長﨑県を中心とした九州西部で確認されているヤモリ。世の中に知られる
ようになったのは比較的最近で、雑誌「日本の生物」（文一総合出版）の
1988年２月号に、五島列島中通島で採集された個体に基づく論文が掲載さ
れてからのことと思われます。
上の写真は、福江島南部の海岸で撮影したものです。岩の割れ目に潜ん
でいるところを見つけました。
本州から九州にかけて分布し、福江島でも見られるニホンヤモリと比べて
やや大型で、体の表面はゴツゴツした印象です。また、ニホンヤモリでは
腹側が灰色あるいは白っぽいのに対し、ニシヤモリでは腹側が黄色である
ことも特徴です。下の写真ではアゴの下付近から黄色がのぞいています。
現在知られているところでは、長﨑県が分布の中心です。長﨑県本土の
西部海岸、五島列島、平戸島、男女群島などで確認されているほか、
それ以外では五島灘に面した熊本県の一部、鹿児島県の一部にも分布
が知られているそうです。
海岸の岩場に生息しているのも大きな特徴です。1981年発行の「五島の
生物」（長﨑県生物学会編）に、五島列島・中通島の海岸に多数のヤモリ
が生息し、岩の割れ目に産卵もしているという記述がありますが、これは
ニシヤモリかもしれないと考えられています。
しかし、海岸から離れた場所でも見つかった例も知られていますので、
海岸でなければ生きられないというわけではないようです。
日中はこうした岩の裂け目に身を隠していますが、夜になると出てきて
昆虫などの小さな生きものを食べます。
私がニシヤモリについて知ったのは、2000年代後半だと思います。2005
年に長﨑新聞社から発行された「長﨑県の両生・爬虫類（松尾公則著）」
という本を、五島市の図書館で見て知りました。福江島でも生息が確認
されているということで、これまで幾度か海岸を探してみましたが、まったく
発見できませんでした。海岸岩場の裂け目にいるとはいっても、実際の
生息環境のイメージがなかなかつかめず、苦戦していました。
それが、先日たまたまとある海岸で、なんとはなしに目に入った岩の亀裂
をのぞいてみたのです。すると、白い卵の殻があって、その近くにはヤモ
リの体が見えました。しかし、裂け目が狭いために全身は見えず、近くに
あった別の裂け目（写真下）をのぞいてみたところ、一匹がよく見える状態
で潜んでいたのでした。
思えば11月の半ばです。冬場には奥のほうに入って冬眠するということ
なので、この時期としては暖かい年であったことが幸いしたのでしょうか。
捕獲も簡単にできそうな場所だったのですが、道具の準備をしていなかっ
たため、断念しました。2日後に準備をして行ってみたのですが、ニシヤモ
リの姿はなく、代わりにフナムシが何匹も入り込んでいました。
というわけで、研究者（松尾公則先生）が五島列島の前島で捕獲された
ニシヤモリの写真も載せておきたいと思います。先生が福江島に来島
された際、見せて下さったものです。
(2014.9.20：五島市・前島産）
これを見せていただいた当時（2014年）、福江島では北部の海岸で見つ
けた以外は、思ったより見つからないということをお聞きしていました。
ので、果たして見つけられるものなのか、自信が持てないままであったの
ですが。一度見つけると、感が身につきはじめる気がします。
下の写真は、同じ日に見つけた卵の殻です。
ニシヤモリの繁殖期は５月頃だそうで、メスは岩の亀裂に卵を２個ずつ
産みつけます。
(2015.11.16：旧福江市）
棒などで引っ張り出そうとするとだいたい割れてしまうのですが、ひとつ
だけ原型に近い状態で取れました。
産卵場所としては、雨が入りにくい高さ１センチほどの亀裂が好まれるそ
うです。条件のいい場所ではたくさんの個体がこぞって卵を産み付けます。
(2015.11.15：富江町）
春には、ちゃんと中身の入った卵を観察したいものだと思います。また、
尾の付け根付近にコブが１つあることもニシヤモリの特徴（ニホンヤモリ
ではコブが３つ）だということで、それを見るために一度は捕獲する予定
です。
(2015.11.12：富江町）
現状ではまだ正式な学名も付いていないというニシヤモリ。福江島では
まだ分布状況も不明な点が多いのですが、一部知人からは夜釣りに行った
際に岩場でヤモリを見ることがあると聞きました。ニシヤモリかもしれませ
ん。この記事を書いている時点では、島内３地点で生息を確認しています。
（2015.11.19）
参考資料
「五島の生物」 長崎県生物学会編
「決定版 日本の両生類爬虫類」 平凡社
「長崎県の両生爬虫類」 長崎新聞社
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